単語・文法

英単語の覚え方と復習設計:忘れる前提で組み立てる間隔反復

公開日: 2026-07-12|文: Yaya

単語帳を1周した。覚えた気がした。1週間後、ほとんど残っていない。「覚える」より「忘れない」ほうがずっと難しい——EigoNote を作ったのは、この壁にぶつかったからです。この記事では、忘却を前提にした復習の設計と、単語を「思い出せる形」で覚えるための具体的な方法をまとめます。

人は覚えた直後から忘れていく

記憶の研究でよく引かれるのが、19世紀の心理学者エビングハウスの実験です。意味のない音節を覚えたあと、時間とともにどれだけ再学習に時間がかかるかを測ったもので、覚えた直後から急激に忘れ、その後ゆるやかになるという曲線が知られています。

ここで大事なのは「人間はダメだ」という話ではなく、忘れるのは正常だということです。1回で覚えられないのは、やり方が悪いのでも、頭が悪いのでもありません。

そして、もうひとつ重要な事実があります。忘れかけたタイミングで思い出すと、記憶は長持ちする。これが間隔反復(spaced repetition)の考え方です。

間隔反復:復習する日をずらしていく

やることは単純です。覚えた単語を、だんだん間隔を広げながら復習します。

回数タイミング状態
1回目覚えた翌日まだ半分くらい残っている
2回目その3日後あやふやになっている
3回目その1週間後思い出せれば定着し始めている
4回目その3週間後ここまで残れば長期記憶に入りやすい

ポイントは間隔を空けることです。今日20回書いて覚えるより、4日に分けて5回ずつ思い出すほうが残ります。同じ努力量でも、配置を変えるだけで結果が変わる。ここが間隔反復のいちばんおいしいところです。

そして間違えた単語は間隔をリセットします。忘れていたということは、まだその単語は「覚えた」段階にないからです。

EigoNote はこの考え方をそのまま実装しています。単語ごとに定着レベルを持っていて、正解すると次の出題が 1日後 → 3日後 → 7日後 → 21日後 と伸び、間違えると最初に戻ります。「今日どれを復習すべきか」を自分で管理しなくて済むようにしたのが、作った理由でした。
記憶覚えた日1日後3日後7日後21日後復習するたび、忘れ方がゆるやかになる
同じ回数でも、まとめてやるより間隔をあけて思い出すほうが残る。

「見て思い出す」と「思い出そうとする」は別物

単語帳を眺めるのと、隠して思い出そうとするのとでは、記憶への残り方がまったく違います。

心理学ではテスト効果(retrieval practice)と呼ばれる現象で、単に読み返すより、思い出そうと努力するほうが記憶が強くなることが繰り返し確認されています。

つまり、単語学習でやるべきなのはインプットではなくアウトプットです。

やり方効果理由
単語帳を眺める低い「知っている感じ」がするだけで、思い出す訓練になっていない
赤シートで隠して答える高い思い出す負荷がかかる
4択クイズ中〜高選択肢がヒントになるが、判断の訓練になる
日本語→英語で言う最も高いゼロから引き出す必要がある。使える語彙になりやすい

「思い出せなくて悔しい」という感覚は、記憶が強くなっているサインです。すぐに答えを見ないで、5秒でいいので粘ってから確認してください。

英単語は「単体」で覚えると使えない

ここからは、覚え方の中身の話です。

単語と訳を1対1で覚えると、テストでは答えられても、読むときと話すときに使えません。理由は単純で、実際の英語では単語は必ず組み合わせで出てくるからです。

コロケーション(自然な組み合わせ)で覚える

英語には「よく一緒に使われる組み合わせ」があります。これをコロケーションと呼びます。

日本語自然な英語不自然な英語
決定を下すmake a decisiondo a decision
宿題をするdo one's homeworkmake one's homework
強い雨heavy rainstrong rain
会議に出席するattend a meetingjoin a meeting(口語では可だが硬い場面では attend)
締め切りを守るmeet a deadlinekeep a deadline

decision を「決定」とだけ覚えていると、動詞を選ぶ段階でつまずきます。make a decision で1つの単語だと思って覚えるほうが、結果的に速い。

例文ごと覚える

コロケーションをさらに一歩進めたのが、例文ごと覚える方法です。

例文で覚えると、次の3つが同時に手に入ります。

  • 使い方:他動詞か自動詞か、うしろに何が続くか
  • 場面:ビジネスの文脈か、日常会話か
  • 記憶のフック:単体より、文脈がある情報のほうが思い出しやすい

ただし、例文暗記には注意点があります。長い例文を丸暗記しようとすると挫折します。目安は10語以内。「この単語を使うならこの形」というが分かればいいので、短いほうが機能します。

単語覚える例文そこから分かること
submitPlease submit the report by Friday.submit + 目的語。締め切りは by
be responsible forShe is responsible for the project.前置詞は for。to ではない(前置詞の考え方
look forward toI look forward to hearing from you.to のあとは動名詞(-ing)

TOEIC の語彙は範囲が偏っている

TOEIC を目標にするなら、汎用の単語帳から始めるのは遠回りです。TOEIC に出るのはビジネス寄りの語彙に偏っていて、同じ単語が何度も出ます

たとえばこのあたりは、TOEIC を受けるなら必ず出会います。

単語意味よく出る文脈
invoice請求書支払い・経理のやりとり
agenda議題会議の案内
reimburse払い戻す経費精算
itinerary旅程表出張の連絡
renovation改装店舗・オフィスの工事のお知らせ

逆に言えば、この範囲を先に潰せばリスニングとリーディングが同時に楽になるということです。僕が金のフレーズのような TOEIC 特化の単語帳を最初に回したのも、この理由でした(450→795で使った教材はこちら)。

覚えられない単語をどうするか

何度やっても定着しない単語は必ず出てきます。そういう単語には、次のどれかを足します。

  • 語源で分解する:re-(再び)+ imburse(財布に入れる)→ reimburse(払い戻す)のように分解できると、意味が理屈で残る
  • 音で覚える:発音して覚える。目で見るだけの記憶より、音のフックがあるほうが強い(発音の基本
  • 自分の生活に結びつける:itinerary なら「自分が旅行に行くときの旅程表」と具体的な場面で想像する
  • いったん諦めて、明日また会う:粘るより、間隔をあけて再会するほうが効率がいい

最後のものが実はいちばん重要です。1日で覚えようとしない。覚えられない単語は、明日また出会えばいい。間隔反復の仕組みがあるなら、そこは仕組みに任せられます。

1日にどれくらいやるか

新しい単語を1日に大量に入れても、翌日の復習が破綻します。目安として、

  • 新規は1日10〜20語まで。それ以上入れると復習が積み上がって続かない
  • 復習は新規より優先。今日の復習を終えてから新規に進む(続ける仕組みの作り方
  • 毎日ゼロにしない。3語でもいいので、間隔をリセットさせない

単語学習が破綻する典型は、最初の1週間で200語入れて、2週目に復習が150語たまって嫌になるパターンです。復習の量は、新規の量が決めるということを最初に理解しておくと、無理のないペースを設計できます。

「書いて覚える」は必要か

結論から言うと、書くこと自体に魔法はありません。大事なのは「思い出そうとしたかどうか」なので、書いても答えを見ながら写しているだけなら効果は薄い。

そのうえで、書くのが有効な場面はあります。

  • 綴りを問われる試験を受ける(英検のライティングなど)。TOEIC は選択式なので、綴りを書けなくても解けます
  • 手が止まる=思い出せていない、が可視化できる
  • 集中が切れているときに、手を動かすと戻ってくる

逆に、時間あたりの効率で言えば書く方法は遅いです。TOEIC のスコアを上げたいだけなら、書く時間を「日本語を見て英語を言う」練習に回したほうが伸びます

紙の単語帳とアプリ、どう使い分けるか

得意なこと苦手なこと
紙の単語帳全体像が見える。どこまで進んだかが物理的に分かる。試験に出る範囲が整理されている復習日の管理が自分任せ。苦手な単語だけ抜き出しにくい
アプリ復習日を自動で管理できる。間違えた単語だけ出し直せる。音声が聞ける収録範囲が中途半端なことがある。全体像がつかみにくい

おすすめは併用です。範囲と全体像は紙の単語帳で決めて、覚えきれない単語の管理はアプリに任せる。この分担がいちばん無理がありません。

多義語は「コア」で押さえる

覚えにくい単語の代表が、意味がたくさんある基本語です。run を「走る」とだけ覚えていると、run a business(会社を経営する)で止まります。

こういう語は、訳語を丸暗記するのではなく共通イメージ(コア)で押さえます。

単語コアイメージそこから広がる意味
run止まらずに動き続ける走る/経営する(会社を動かし続ける)/(機械が)作動する
address正面から向かう住所/演説する/(問題に)取り組む
cover上からかぶせる覆う/(費用を)まかなう/(範囲を)扱う
hold手に持って離さない持つ/開催する/(電話を)保留にする

TOEIC の語彙問題では、この「基本語の意外な意味」が狙われます(Part5の語彙問題の捌き方)。知らない単語より、知っているつもりの単語のほうが危ないということです。

まとめ

  • 忘れるのは正常。忘れかけたときに思い出すと記憶は長持ちする
  • 復習は 1日後 → 3日後 → 1週間後 → 3週間後 と間隔を広げる。間違えたらリセット
  • 眺めるのではなく思い出そうとする。テスト形式のほうが圧倒的に残る
  • 単体ではなくコロケーションと短い例文で覚える
  • TOEIC 対策なら出る範囲が偏っているので、特化した単語帳から入る
  • 新規は1日10〜20語。復習を新規より優先する

EigoNoteで間隔反復を自動化する(無料)

Y
Yaya

国際学部の大学生。TOEIC は大学1年のIPテストで450点、会場受験で540点。大学2年でオーストラリアに4か月留学し、現地で英語を話しながら空き時間にTOEIC対策を続けて、帰国後に795点。いま900点を目指して勉強中です。そのときに「先に知っておきたかったこと」を EigoNote にまとめています。

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